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ディープインパクトを悼む:今週の小倉で大物新馬登場

7月30日、シンボリルドルフ以来2頭目となる無敗のクラシック三冠を達成したディープインパクトが頸部(けいぶ)の骨折で死亡したと社台スタリオンステーションが発表し、競馬界に激震が走りました。

享年17歳。

他の三冠馬の没年をみると、8歳で没したナリタブライアンのようなケースもありますが、戦前の三冠馬であるセントライトは27歳没、シンザンが35歳没、父内国産として初めてとなったミスターシービーが21歳没、前述のシンボリルドルフが30歳没。

概ね長生きしたケースが多かっただけに、「早すぎる死」という印象が強いです。

 

現役時代の活躍もさることながら、ディープインパクトの種牡馬として成功ぶりは目覚ましいものがありました。

直近のオルフェ―ヴルを含めた他の三冠馬とクラシックG1勝ち馬の輩出で比較すると、セントライトは菊花賞を勝ったセントーのみ、シンザンは皐月賞・菊花賞を制したミホシンザンと菊花賞馬のミナガワマンナの2頭、ミスターシービーとナリタブライアンはなし、オルフェ―ヴルは皐月賞馬のエポカドーロのみ。

それに対して、ディープインパクトは、牝馬3冠のジェンティルドンナを筆頭に、オークス・秋華賞を制したミッキークイーン、桜花賞馬マルセリーナとアユサン、ハープスター、皐月賞馬のディーマジェスティとアルアイン、オークス馬シンハライト、ダービー馬のディープブリランテとキズナ、マカヒキ、秋華賞馬のショウナンパンドラとヴィブロス、菊花賞馬のサトノダイヤモンドとフィエールマンなど多種多彩。

現3歳馬もグランアレグリアが桜花賞、ラヴズオンリーユーがオークス、ロジャーバローズがダービーを勝つなどその勢いは止まりません。

 

ディープインパクトの種付け料は4000万円まで高騰したと言われ、年間200頭の合計80億円を生み出す大種牡馬の早世は日本の競馬界の大きな損失であることに間違いありません。

 

 

この訃報で、ある一頭のディープインパクト産駒の注目が集まっています。

その名は「アルジャンナ」。

元々、アメリカの2歳G1のスピナウェイステークス(ダート1400m)を勝ったコンドコマントを母に持ち、2017年のセレクトセールで1億7000万円の値をつけた良血馬です。

デビューに向けた調教で抜群の動きを見せ、「ディープの真の後継」と早くも噂が立ち込めているほどの逸材です。

注目を集めているのはその馬名で、アラビア語で「天国」という意味なんだそう。

父が逝った週にデビューする馬の名として、これほど意味深なものはありませんね。

厩舎も父を管理していた池江泰郎氏の息子の池江泰寿厩舎です。

 

まあ、セレクトセールで1億円を超えようが、看板倒れだった、なんてことはよくある話なので、案外、、、という可能性も大いにありますが。。。

 

今週のデビュー戦は日曜小倉芝1800mで、前年の勝ち馬ヴェロックスが今年のクラシック戦線をにぎわせました。

 

この馬の血統をみると、

母父がティズワンダフルで、日本では珍しいマンノウォー系の血です。

僕が確認した限り、ティズワンダフル産駒による国内重賞勝ちはゼロ。

そもそもマンノウォー系の日本における活躍自体、2000年以降でG1勝ちはウォーニング産駒のカルストンライトオ、サニングデールのみと寂しい感じが否めません。

ティズワンダフルは米国最高峰のレースであるブリーダーズカップクラシックを初めて連覇したティズナウの子でG1勝ちはなし。

母馬の母方はシアトルスルーと、先行力を生かしてオラオラ勝負するアメリカンな香りが漂う血統構成です。

 

うーん、日本の堅い芝でちゃんと順応するの?という不安がよぎります。

 

しかし、ディープインパクトという種牡馬は、こうしたオラオラ系アメリカン娘との相性が良いという面もあります。

 

一番分かりやすいのが母父ストームキャットです。

ストームキャットというのは米国で一世を風靡した大種牡馬で、最盛期には50万ドル(当時のレートで6000万円)というディープインパクトもびっくりの大人気ぶりでした。

ただ、産駒は粘土質でパワーを要するダートで力を発揮して、早熟かつ先行からオラオラ攻める典型的なアメリカンな特徴を持つ馬で、日本でG1勝ち馬はゼロ。

 

この馬を父の持つ牝馬とディープインパクトが相性がよく、母父ストームキャットの高額賞金馬20傑のうち、8頭がディープインパクト産駒となっています。

少し例を出すと、キズナ、サトノアラジン、リアルスティールなどで、今年のダービーの1,2着馬はともに、このディープインパクト×母父ストームキャットという取り合わせでした。

 

また、日本の軽い芝に適応するキングマンボではないミスタープロスペクター系はパワー偏重で日本で苦戦傾向ですが、このパターンでも、

トーセンラーやヴィブロスなどでG1を勝たせています。

 

こういう実績をみると、ティズナウとシアトルスルーの血をうまく生かして新たな黄金パターンか?と期待も膨らみますが、日本でのティズナウ実績が皆無に等しいだけに心配ではあります。

 

あまりに不確実性が大きいのにも関わらず人気を集めるので、今回は馬券で勝負をかけたりはせず、ディープへの畏敬の念を胸にレースを見る程度が良いかもしれませんね。

 

ディープインパクトのご冥福をお祈りして。

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