給料アップって嬉しいですよね。
会社によって昇給の仕方や時期は違うと思いますが、4月が多いのではないでしょうか。
僕は今年、稀に見る高評価で月額7500円アップしました。
ボーナス分とかを加味すると、ざっくり年間で10万円ちょいの年収アップです。
でも、残念ながら、10万円の昇給額はまるまる手元には残りません。
税金や社会保険料でガッツリ引かれる、というイメージは皆さんお持ちかと思います。
この引かれる金額は年収の水準によって変わってきます。
稼ぐお金が多い人ほど税率がアップするというのは「累進課税」という概念として昔、学校で学びましたね。
これは所得税の話ですが、この所得税の金額がどうやって決まるのかまでを考えたことある人は少ないかもしれません。
この所得税の計算を通じて、身近な給与に関する言葉を整理してみました。
<目次>
■所得税はどうやって決まる?
■いわゆる額面年収を示す「給与収入」
■仕事の経費を差し引いた「給与所得」
■税金算出の根拠となる「課税所得」
■所得税はどうやって決まる?
■所得税はどうやって決まる?
結論を先に言うと、所得税は「課税所得」で決まります。
毎月会社からもらう給与明細には書いてありませんが、1年に1度もらえる「源泉徴収票」にはこの課税所得の金額が書いてあります。
行政が勝手に決めてくれるから決まった金額を払っていればいいやって、僕も以前は思っていましたが、それは色々と勿体ないのです。
特に困るのは、「家を買ったとき」「投資で利益・損失が出たとき」などです。
いずれ来るときに備えたい人、すでに困っている人、賢く生きたい人は必読です。
■いわゆる額面年収を示す「給与収入」
年収の話をするとき、「年収1千万?それって額面?手取り?」みたいなやり取りになる事が多いと思います。
まずは額面年収から。
そもそも給与とは、基本給と手当に大きく分けられます。
ここでいう手当には、業務に関する手当(時間外手当※、役職手当、資格手当など)以外にも業務に関係しない手当(家族手当など)があり、これらの手当を足し上げたものが給与となります。
1年間に会社から、もらえる給与の総額が「給与収入」であり、俗に額面年収と呼ばれます。
※ただし、家から会社に通うための通勤にかかる費用は、会社から支給される手当の一部ではありますが、月額10万円までは非課税のため、給与収入には含まれないようです。
■仕事の経費を差し引いた「給与所得」
会社からもらえる給与の総額が「給与収入」と書きましたが、会社勤めをしていくためにはスーツやシャツを買ったり、身だしなみを整えたりと、色々とお金がかかります。
お金を稼ぐためにかかる費用のことを「経費」と呼びますが、個人の税金算出においても、この経費の考え方が存在します。
とはいえ、一人ひとりが「今年は服にいくらかけて、、、」と費用を計算してまとめるのは大変です。
そこで国が「このくらいの給与をもらう人ならこれくらい使うだろう」とざっくり決めた数値を使って簡便に計算することになります。
このざっくり決めた数値なるものが、「給与所得控除」で、計算方法が明確に決まっています。
例えば、300万円の人なら、給与収入300万円×30%+18万円で、
108万円が控除額となり、給与所得は192万円、
800万円の人なら、給与収入800万円×10%+120万円で、
200万円が控除額となり、給与所得は600万円、となります。
2018年度は以下のような計算式になります。
給与収入180万円以下→給与収入×40%(65万円に満たない場合には65万円)
給与収入180万円超~360万円以下→給与収入×30%+18万円
給与収入360万円超~660万円以下→給与収入×20%+54万円
給与収入660万円超~1,000万円以下→給与収入×10%+120万円
1000万円超→220万円
※この給与所得控除の計算方法は年によって変更される可能性があるため、国税庁のウェブサイトで確認ください。
「年収が高い人ほどお金を稼ぐために必要な経費も増えるけど、給与に占める割合はそこまで大きくはないよね」という思想が垣間見えます。
ただ、この段階でもまだ税金を計算する数値にはなっていません。
■税金算出の根拠となる「課税所得」
仕事に関わる部分の給与から、そのための経費を差し引いて給与所得となりましたが、国に納める税金は、もう少し個人的な事情を考慮してくれます。
ここでいう事情とは、
・養っている奥さんがいる(配偶者控除・配偶者特別控除)、
・養っている親族がいる(扶養控除)
・寄付をした(寄付金控除)
・大怪我をして病院代がかさんだ(医療費控除)
など14タイプあり、「所得控除」と言います。
(給与所得控除と混同しそうですが、似て非なるものです)
「キミもいろいろ大変だろうから、納める税金を少しばかり減らしてやろう」という国からの慈悲(所得控除)を差し引くと、「課税所得」となります。
ここで出てきた数字を根拠として、所得税を算出するわけです。
2019年6月現在でも、配偶者控除に関わる見直しが行われています。
国がどういう働き方を国民にしてほしいのか、が税に現れているという見方もできますね。
■所得税はどうやって決まる?
先に出した額面年収300万円と800万円の人を例に出して計算してみます。
年収300万円の人は、独り身で、特に税金優遇に関わるような事情がないことにします。
そうすると、
給与収入300万円
→給与所得192万円 - 基礎控除(38万円) - 社会保険控除(43万円)
=111万円(課税所得)
となります。
ここで出てきた「基礎控除」とは誰でも自動的に受けられるものです。
なんで基礎控除なるものが存在しているかはよくわかりませんが、wikipediaでは以下のように解説されています。
“この基礎控除が存在する理由は、個人の所得のうち、本人の最低限度の生活を維持するのに必要な部分は担税力を持たないと考えられることにある”
※金子宏『租税法』(第22版、弘文堂、2017年)の199頁・200頁を参照。
うーん、なんだかよくわかりませんね(笑)。
もう1つ出てきた「社会保険控除」とは、
厚生年金や健康保険、雇用保険などいわゆる社会保険のために徴収された金額は全額、課税対象から外すためです。
この3つを足し上げると合計で14.4%に上ります。
稼いだお金はこうして強制的に国に抜かれていくのです。。。
ともあれ、年収300万円の独身者の場合は課税所得が111万円であることを確認しました。
課税所得の水準によって、税率が変わるわけですが、今回のケースで言えば課税所得の5%が所得税となります。
ちなみに、
課税所得が
195万円以下の人は一律5%、
195万~330万円の人は、課税所得の10%から97,500円を引いた金額、
330万~695万円の人は、課税所得の20%から427,500円を引いた金額、
695万~900万円の人は、課税所得の30%から636,000円を引いた金額、
900万~1800万円の人は、課税所得の33%から1,536,000円を引いた金額、
1800万~4000万円の人は、課税所得の40%から2,796,000円を引いた金額、
4000万円超の人は、課税所得の45%から4,796,000円を引いた金額、
が所得税として国に抜かれることになります。
とりわけ影響が大きいのは、税率が10%から20%に変わる課税所得330万円のラインです。
妻帯者であれば額面年収が650~690万円近辺、独身者であれば620~640万円近辺の人ですね。
税率が変わるとどのくらい効いてくるかというと、
課税所得が310万円(所得税21.3万円)から10万円昇給して320万円(所得税22.2万円)になっても、9千円アップなのに対して、
課税所得が330万円(所得税23.3万円)から10万円昇給して340万円(25.3万円)になると、2万円アップ。
10万円のうちの1.1万円も効いてくるわけですから、手取り額のアップを実感しづらくなるでしょう。
同じように、税率が33%から40%に上がる課税所得1800万円超の人たちも納税負担をひしひしと感じるわけで、このくらいになってくると、「課税所得」を引き下げて負担を軽減するか、という“節税”にも本格的に取り組むようになるのです。
節税とは、課税所得をいかに減らすか、に他なりません。
保険会社などが甘い言葉で囁く“怪しい営業”が本当に自分のためになるかを判断するためには、今回解説した課税所得の意味が分かっていないといけません。
節税の話はまた長くなるので、今日はここまで。